江戸東京野菜の後関晩生小松菜を育てる

後関晩生小松菜

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江戸東京野菜のひとつ、後関晩生小松菜を栽培している。

種を買った野口種苗研究所のサイトでは、「秋まきの露地栽培で寒さに合わせ糖分を蓄えた味は他の追随を許さない(http://noguchiseed.com/hanbai/tane/shosai/0222.html)」と紹介されている。そこまでうまい味のものを育てられるかどうかはわからないけれど、昔ながらの品種に興味があり、かつ、味を重視したい姿勢の身としては、そそられる文言だ。

ただ、味がいいとはいえ、栽培している人はとても少ないらしい。というのも、この小松菜は柔らかくて食味がいい反面、茎や葉が折れやすく、収穫や袋詰めに手間取るからだ。さらに、生育がそろわない(つまり一度に大量に収穫・出荷するのが難しい)、病害虫に弱いなどの弱点もある。

うちのような小さな農家は、生育が揃わなくても致命的な問題にはならない(もちろん揃ったほうがいい)けれど、農薬を使わないで栽培しているため、病害虫に弱いというのはけっこう辛い。

このふたつの弱点は、市場流通では命取りになるのだろう。なにしろ、生育が揃わなければ大量生産には向かないし、折れやすいとなると気を配りながら収穫しなければならないので時間がかかる。その後の長距離輸送(産地から市場)もきっと注意が必要になるに違いない。

最近の小松菜のほとんどは、こうした弱点を克服するため、中国野菜のチンゲン菜などとかけ合わされた交配種がほとんどらしい。確かにチンゲン菜は茎葉がしっかりしている。あちら立てればこちらが立たず、というのか、その分、小松菜らしい食感や風味は失われてしまうようで、そこが残念なところだ。

実際に育った後関晩生小松菜を収穫してみた。確かに、研修中に栽培していた交配種の小松菜と比べると、茎が圧倒的に弱く、ぽきぽきと簡単に折れてしまう。調製するときも、折れないように丁寧に扱わないといけない。交配種の小松菜は、さほど気を使わなくても折れたりしない。栽培する人が減っていくわけだ。

いくつか収穫して、味噌汁の具にして食べてみた。まだ冬の寒さにあたっていないので、小松菜らしい風味が十分出ているとはいえないけれど、交配種の小松菜のように筋っぽくなく、シャキシャキしているけれどやわらかい。うまみがのってくるのが楽しみな味わいだ。

後関晩生小松菜にもいくつかの系統があるようなので、系統によって変わるかもしれないけれど、うちで育てているものは外観が交配種の小松菜とはずいぶん違って、葉が茎に沿ってもやーっと全体的に広がっている感じだ。見慣れないと小松菜とは気づかないかもしれない。直売所ではあまり売れないかなーと思いながら、試しに少しばかり出してみたところ、悪くない反応だった。

伝統的な小松菜の味わいを少しでも多くの人に知ってもらえる機会なので、価格をうまく調整して直売所で丁寧に売っていこう。冬になって味の十分乗ったものがうまく出せれば、この小松菜のファンが生まれるかもしれない。

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