里山自伐型自給林業のすすめ


自伐型林業というのが注目されてきています。従来の林業とは違い、自分で山を持ち(または借り)、その山の木を自分で伐採し、搬出して木材として販売するやり方です。
ただ、山があればどこででもできるというものではなく、売れる(売りやすい)材がとれる木が生えている山があること、数百万円単位の初期投資、必要な技術の習得にかかる時間、地元との関係づくりなど、さまざまな課題があるようです。

ここで提案する里山自伐型自給林業(井伊農場の造語)は、伐った木そのものを売り、経済的な利益を得ることを目的としていません。半農半Xという生き方が提唱されて久しいですが、その林業版のようなイメージです。
現金収入を得る仕事は別に持ち、空いている時間で里山の手入れをしながら、自分の暮らしに必要な資源をいただく、そういう里山の活用方法です。そのような活用をすることが里山の手入れにつながり、手入れのされた美しい村の風景をよみがえらせ、さまざまな生き物が戻ってきて、村のにぎわいを呼び戻すことにもつながります。

身近な山や森が暮らしに潤いをもたらすことを肌で感じながら、その森林資源の恵みや豊かさを取り入れた暮らしを楽しむ。そんな生き方が里山自伐型自給林業の根にある考え方です。

里山の恵み

里山からいただく資源は、木材、竹、山菜、きのこ、落ち葉、苗など、自分の経験や知識、技術次第でいろいろ広がります。簡単には身につかないものもありますが、里山自伐型自給林業は生活に必要なお金を稼ぐ手段ではありませんので、時間をかけてじっくり楽しみながら少しずつ身につけていけばいいのです。

実践事例

井伊農場が実践している事例をご案内します。

1.木
自伐型林業の薪
自給燃料としての薪

自伐型林業 椅子
仕事道具づくり(伐倒した木の皮をむき、斫って作った作業用の椅子)


自伐型林業 活用事例
天然の芳香剤(伐採した檜を割って風呂に置くと檜の香りが風呂中に広がる)

次の段階として、伐った木を自分で製材し、小屋や家具づくりなどに活用したいと思っていますが、まだまだ勉強と実践が足りません。


2.竹
自伐型林業 竹の活用
稲の稲架がけ棒や脚として利用


自伐型林業 竹の活用
稲架掛け棒や脚の保管台をつくる


自伐型林業 竹の活用
燃料として活用(米麴づくりのための蒸し米づくり)


自伐型林業 竹の活用
切り出した竹を割って小屋の壁材として利用

自伐型林業 竹の活用
無煙炭化器を使った簡易製炭(竹炭)。焼いた炭は田畑の土を育てるのに使う



3.落ち葉
自伐型林業 落ち葉の活用
落ち葉を発酵させた熱で冬の間に苗を育てる踏み込み温床





自伐型林業 竹の活用
堆肥枠と落ち葉堆肥づくり。切り出した竹で枠をつくり、そこに落ち葉をためて堆肥化する。枠づくりには釘やビスは一切使っていない


4.苗
山から堀ってきた樹木の苗を庭に植えて庭づくりをする


山菜やきのこの採取はこれから勉強し、挑戦したいと思っています。

実践に適した場所

活用されていない里山があり、軽トラックが入れる道があるところ

必要な道具や機械

どのように里山を活用したいのかによって、必要な道具や機械類は変わってきます。うちはまず、ホームセンターで売っている竹引きのこぎりと鉈(なた)、軽トラックだけで始めました。
竹を切り出し、本業の農業(稲作)に使い、使い終わったものを味噌づくりの際の燃料にする。残った炭や灰は田畑や庭づくりに活用する。スタートはそんな感じでした。たったこれだけのことでも、わずかな竹林整備につながり、里山と田畑のつながりを回復させられます。なにより、少しとはいえ暮らしの金銭依存度が下がり、自分の力で切り拓いたような感覚を得られることが大きな喜びになり、それが次の一歩につながるのです。

現在うちが使っている機械や道具は以下のものです。

チェーンソーと防護服等
自伐型林業チェーンソー
あくまでも本業は農業で、山仕事はおもに冬の間だけですし、いつか小出力の電力を自分で生み出してみたいという野望があるので、チェーンソーはガソリン式ではなくバッテリー式のものを選びました。スチールの製品をすすめられ、本当はそれを買いたかったのですが、刈払機との兼ね合いでマキタのものにしました。本格的な林業をやるわけではないので、今のところこのチェーンソーの性能で十分だと思っています。



自伐型林業 斧
左から伐倒用の斧、薪割り斧、手斧(ておの)

最初に買ったのは憧れの薪割り斧で、お世話になっている原木しいたけ農家の方に譲ってもらえる余った原木で2年くらい薪割りを楽しんでいました。最初はおぼつかなかった薪割りも、今では狙ったところに斧を落とせるようになり、「習うより慣れよ」という先人の教えの意味を実感しています。
続いて買ったのが、左の伐倒用の斧です。なるべくガソリンや電気等のエネルギーを使わずに燃料エネルギー(薪)を得たいので、細い木を人力で伐倒するために購入しました。まだ数本しか倒せていませんが、へたくそなりに少しずつ実践し、徐々に自信が深まってきています。


鋸(のこぎり)
自伐型林業 大鋸
鋸は上の写真の木挽き用と、竹引き、枝打ち用の3つを使っています。木材を自給するのが大きな目的のひとつなので、伐倒した木を自分で製材するために木挽き鋸(大鋸)を骨董市で見かけ、即買いました。


鉈(なた)

木の枝打ち、竹の枝はらい、絡みついたつるを切ったりするのに使っています。



自伐型林業 鎌
鎌は3種類使っていて、上から順に大鎌、のこぎり鎌、草刈り鎌になります。大鎌は山の下草刈りに使いたいと思い、大鋸と同じ骨董市で買ったものです。
のこぎり鎌と草刈り鎌はおもに本業の農業で使うものですが、山仕事でも活躍します。


刈払機
山仕事では下草刈りに使っています。山林用のチップソーや刃をつけて使っています。

今後、買い足したいもの

チルホール(牽引具)、木回しなど

必要な技術や経験等

チェーンソーを使う場合は、専門機関で実施されているチェーンソー特別教育講習等を受けることを強くおすすめします。チェーンソーの作業は事故が多くとても危険で死亡事故も発生しているため、業務でチェーンソーを使う人に受講が義務付けられている講習です。里山自伐型自給林業は金銭を得る業務ではありませんが、チェーンソーの安全な使い方を習わずに山仕事で使うのは、あまりにも命知らずな行為です。

講習を受け、基礎的なことを理解した後、初心者向けの場所で誰かについてもらいながら少しずつ練習するのがいいと思います。身を守るための防護服等も必ず着用するようにしてください。

本質的に必要なのは「意欲」、それだけ

あれこれ、それっぽいことを書いてきましたが、本質的に必要なのは意欲、それひとつです。資金や技術、知識などはそれを補完するものに過ぎません。
エアコンの効いた室内で机に向い、キーボードを叩くこと以外、何もできない事務系の会社員だったおれでも、実践を地味に重ねたことで少しずつできるようになりました。たとえ最初はうまくできなくても、意欲を持ち、喜びを感じながら続けていけば、誰でも少しずつ上達します。
やれない理由探しをしている時間を、動き出す時間に変えていければ、何もなかったところに輪郭が生まれ、いずれ形を成すということを、実体験で感じています。

どんなことでも、最初からできる人などどこにもいないのです。

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