むかし野菜も大切に

秩父の在来大豆、借金なし
秩父の在来大豆「借金なし」
秩父の在来大豆、借金なし

長い歴史のなかで、それぞれの作物にはいろいろな品種が生み出されてきました。

もくじ

交配種という種の特徴

現代は特に種苗会社が複数の品種を交配させて多様な品種を作り上げ、商品化しています。これを交配種やF1(雑種第一代)と呼びます。特定の病気に対して抵抗性がある、収穫量が多い、寒さや暑さに強い、発芽やその後の生育がそろいやすいなど、さまざまな特徴を持っているため、多くの栽培現場で一般的に使われています。

ただ、こうした種は遺伝の法則にのっとって採種されるため、買って来た種を自分で育てて種を採り、その種で作物を育てても、親作物の特徴がすべての子作物に受け継がれるわけではありません。

●ご参考
交配種(F1)野菜とは何だ?(野口種苗研究所)
http://noguchiseed.com/hanashi/f1/f1_1.html

ニラのため

ニラの種

ですので、前述の特徴を生かそうとするなら、自分で採った種を使うのではなく、毎年、種苗会社から種を買う必要があります。種苗会社も費用と時間をかけて新しい品種を開発しているので、交配種の種をもとにして自分で種が取れないこと自体を問題視したいわけではありません。

昔から受け継がれてきた在来種とその文化

その一方で、昔から各地で受け継がれてきた在来種と呼ばれる作物(ここでは野菜に限定して「むかし野菜」と呼びます)があります。江戸東京野菜として注目を浴びるようになってきた野菜もむかし野菜です。こうした作物は、古くから土地の人々が種を採り、後世につないできたもので、一定の固定された形質が種によって親から子へ受け継がれることから、固定種とも呼ばれます。(ただし固定種=在来種ではありません)

大浦太ごぼう

千葉県で昔から栽培されてきた在来の大浦太ごぼう

それぞれの作物は長い年月の間に各地の気候風土にあわせて少しずつ姿を変えながら、特徴的な郷土料理を生み出してきました。たとえば聖護院カブと京都の漬物の代表格とされる千枚漬け、加賀レンコンと金沢のはす蒸しなどです。

秩父の在来大豆、借金なし

借金がなくなるくらいたくさん取れることから名付けられた秩父の在来大豆、借金なし

交配種が売りにする栽培しやすさや販売しやすさは、農家にとってとてもありがたいことです。とくに、一度に同じ作物を大量に生産して出荷する産地では、栽培しやすさに含まれる発芽や生育のそろいはとても重視されます。

ただ、食文化という言葉があるとおり、食べ物は文化のひとつです。競争を主軸に添えた「強い農業」ばかりを推し進めていては、食文化を支えてきたむかし野菜は廃れ、失われてしまいます。それは同時に、種をとる技術や知識、伝承などが失われることも意味するのです。
一度消失したものは、簡単には取り戻せません。

種苗会社やジーンバンクが在来品種を守る?

種苗会社がすぐれた品種を新しく開発するためには、多様な遺伝子資源が必要になるので、その保存に力を入れているという意見や、国や各国の研究機関が遺伝子資源を保存するためのジーンバンクを整備しているので、在来種が途絶えることはないという主張もあります。
確かに在来の遺伝資源自体が失われることはないかもしれません。ただ、種苗会社は自社のために保存しているわけですし、ジーンバンクはおもに調査や研究開発のために保存しているのであって、地域やそこで培われてきた食文化を守るためではないでしょう。

群馬県のあるお寺で栽培されてきたという小松菜の新戒青菜(しんかいあおな)。葉は厚みがあって柔らかく、小松菜らしい風味に富んでいる。

群馬県のあるお寺で栽培されてきたという小松菜の新戒青菜(しんかいあおな)。葉は厚みがあって柔らかく、小松菜らしい風味に富んでいる。

食文化の集大成といえる和食がユネスコの無形文化遺産に指定されましたが、すばらしい和食を構成するひとつひとつの作物には、あまり目が向けられていないのが残念です。

微力ではありますが、先人たちが守ってきたむかし野菜も大切に受け継いでいきたいという想いから、当農場ではむかし野菜の種を販売する種屋さんを大切にし、少しでも多くのむかし野菜を栽培に取り入れています。

当農場が種でお世話になっているところ

自然農法国際研究開発センター http://www.infrc.or.jp/seeds/
野口種苗研究所 http://noguchiseed.com/hanbai/
つる新種苗 http://tane.jp/
光郷城 畑懐 https://kougousei-hafuu.jimdo.com/
高木農園 http://takaginouen.com/?cat=54
たねの森http://www.tanenomori.org/

お世話になったことはないけれど、加賀の在来種を扱っている気になる種屋さん
江戸時代から続く老舗だそうです。
松下種苗店 https://www.matsushitaseed.jp/


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