奥武蔵地這キュウリの片付けー節なりと地這キュウリの違いと味

キュウリ支柱の片付け(奥武蔵地這)

キュウリ支柱の片付け(奥武蔵地這)

夏野菜の片付けを進めている。

ここ週数間で一気に気温が下がり、ぐっと秋らしくなってきた。朝晩は冬を感じさせるくらいだ。気温が下がってくると、夏に最盛期を迎えていた野菜たちは、寒さに震えるように葉を落としたり、実(身)を小さくしたりして早めに子孫(種)を残そうとするかのように、表向きの勢いがなくなってくる。

8月にたくさんの実をもたらしてくれたキュウリを片付けた。枯れた茎葉をネットから外し、支柱を畑から抜いてまとめる。キュウリの根元に敷いていた麦わらや枯れ草を隣の畝に寄せ、生えてきたいくばくかの草を三角鎌で削り取る。

キュウリが盛んに実をならせていた頃のことを思い出しながら片付けをしていると、ひとつの時間の流れが去っていったかのような気分になり、キュウリが頑張ってくれたことに感謝しつつ、うっすらとした寂しさに覆われる。

っと、感傷的になったいる場合じゃない。次の野菜が待っている。

今年は埼玉県の秩父地方で育種されている奥武蔵地這という品種のキュウリを育てた。キュウリには大きくふたつの種類がある。ひとつは、中心となる親づるの節ごとに実をならせる「節なりキュウリ」。もうひとつは、主枝から分岐した子づるやそこからさらに分かれた孫づるに実がつく「地這キュウリ」。

●参考
節なりキュウリと地這キュウリの違い(野口種苗研究所)
http://noguchiseed.com/yasai/spring/jihai_kyuuri.html

節なりキュウリのほうが実なるところが親つる周辺にだいたい定まっているので収穫が楽なこともあり、家庭菜園などを除き、販売目的での栽培の場合はほとんどの農家がこちらを育てていると思う。
一方の地這キュウリ。地這と言っても、地面を這わせて育てるだけでなく、支柱を立ててそこに張ったネットに絡めて育てることももちろんできる。品種によって多少の違いがあるかもしれないけれど、つるが左右に広がり旺盛に葉をつけ、あちこちに実らせるため、収穫に時間がかかる。だから敬遠されるのだろう。

収穫の手間を優先条件として品種を選ぶなら、地這キュウリの存在は遠く霞む。ただ、うちでは、たまたま最初に育てた地這キュウリ(ときわ地這)が、柔らかくてほんのり甘みがあり、とてもおいしかったので、以来、地這キュウリしか育てていない。パリパリした食感のキュウリが主流のようだけれど、うちが育てている地這キュウリは、皮がやわらかいためかパリパリよりポリポリといった口当たりだ。

昔ながらのキュウリの味はこんなだったらしい、という話を聞いたことがある。キュウリもまた、栽培しやすさを最優先して品種改良が進められてきたんだろう。もちろん、栽培しやすさは農家にとって最重要課題のひとつだ。技術的にまだまだ未熟なうちにとっても、栽培しやすいというのはありがたい。

でも、それより、自分がおいしいと感じた品種を育てて、そのおいしさを食べてくれる人と分かち合いたいという思いのほうが強いし、野菜を買ってくれる人にとっては、育てやすさよりおいしさに関心が向くだろう。

もちろん、味には好みがあるので、パリパリしたキュウリを好む人には、うちのキュウリは口に合わないだろうし、スーパーや直売所の野菜売り場を見る限り、パリパリキュウリのほうがおそらく人気がある。

でもまあいい。流れにのる必要のあるときもあるけれど、常に主流をたゆたう必要はない。昔ながらの味を求めている人にうちのキュウリが届き、喜んでもらえれば、それで十分幸せだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です