別の立場で考える出荷体験

収穫してきた真黒なす、ときわ地這きゅうり

日曜日は埼玉県寄居町で開催している、よりい週末有機農業塾、自分たちで育てた野菜を使い、男衾農産物直売所での出荷体験をやった。
出荷する野菜は、茄子、胡瓜、ピーマン、オクラの四種類。

今までは野菜は買うものだった。農業塾に入ったことで、栽培するという視点が加わり、さらに出荷体験で買うとは逆の売るという視点も加わることになる。視点が増えたことで、見ているものは同じ野菜だけれど、見える景色や考えることは大きく変わる。

浜ニュークリームピーマン

浜ニュークリームピーマンを計量する

それまでは、野菜はできあがったものだった。

栽培することで、種、開いた双葉、成長のようす、植え方、花の色や形、におい、土の感触などを知った。土から離れ、命を失ったかのような姿でスーパーの棚に並ぶ野菜ではなく、日々、生命力にあふれ、すくすくと育つ植物としての野菜を見た。

それを売ることになる。

今までは同じ野菜なら、安いほうがよかった。でも、同じ野菜はないことも分かった。きゅうりといっても、多様な品種があり、育てた人が違えば育て方も変わるし、土が違えば生育や味にも影響する。

袋詰めしたおくら

袋詰めしたおくら

売るとなると、価格を決めることになる。かかった経費や時間、栽培の手間を考慮しなければならないし、同じ野菜はないのだから、競合するかのように見える他の野菜との違いをどう表現するのかも考える必要が出てくる。

スーパーのチラシを見せる。特売でピーマンが一袋78円で売られている。今までは嬉しかったが、今は複雑な心境だ。
ピーマンの種をまくのは3月頭。苗を育てるための場所づくり、育てる期間、植え付けてからの管理、支柱を立てるときの苦労…。
「この価格でいいのだろうか」

ただ、自分たちは週一回とはいえ、栽培の過程を見てきたから、そういう気持ちになるけれど、世の中の圧倒的多数は、以前の自分たちと同じ、「安いほうがいい」のだ。

この溝をどう埋めたらいい?

どんどん課題を投げ掛けて、頭の中をグルグルさせるように考えてもらった。それが出荷体験の真の狙いなのだ。やるべきこと、伝えたいことは、いつもはっきりしている。ただの収穫体験とか、楽しい農作業体験とか、そういうことをやるつもりも時間もない。

無農薬で安心安全などと言ってるだけでは、何も変わりはしない。むしろ、そこしか見なかったら状況は悪化する可能性すらある。

もっと現場を見て、考えて欲しい。それには、やはり一時的とは言え、今までとは違う立場に立ってみるのが分かりやすい。

あ、こっちからだと、こういう風に見えるんだ……。

出荷後、感想を聞いてみた。

●我が子を嫁に出すかのような心境だ
●頭がものすごく疲れた
●何て言っていいかわからない、複雑な気分になった

次の月曜日からはきっと、スーパーの棚に並ぶ野菜が、今までとはちょっと違った風に見えるはずだ。

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