地域資源栽培って??

地域資源栽培とは、その地域にあるさまざまな資源を作物の栽培に活用する、省エネルギーで循環型の農法です。昔はこれがごくありふれた農業の姿でしたが、化学肥料と農薬をセットにした、経済効率最優先の大規模栽培が一般化するにつれ、どんどん廃れていってしまいました。

でも、私はもう一度自然と向き合い、人間が自然の一部ととらえられていた時代のやり方を学びなおし、大規模栽培や輸出などとは違った手法で、農の復権を目指したいと考えています。

ここでいう地域の資源は、大きく2つに分けられます。

地域の資源1 種

地域の資源の一つ目は種です。現在、日本で販売されている種の多くは外国産と言われています。正確な統計はないようですが、やや古いものの朝日新聞の記事(2012年12月25日)によると、国内採種率は10~20%ほどのようです。

一般的な種袋の裏面には種の生産地が記されていますが、ほとんどは外国製です。

現在では、種は買うものとみなされていますが、作物を育て、花を咲かせてその地域で種を採ることで、作物生産の源となるこの種を在来化し、地域の資源としてよみがえらせます。

法律の変更により、自分で種がとれる作物の種類は狭められてしまいましたが、在来種とよばれる昔ながらの作物などは、まだ種を採ることができます。

地域の資源2 里地里山が生むもの

里地里山は、 落ち葉、草、竹、篠竹、わら、もみ殻、米ぬかなど、さまざまな資源を生み出してくれますが、今はほとんど使われなくなり、ゴミや邪魔者と見なされてしまっています。

使わないと、 地域の景観が荒れ、獣の害を引き起こすことになりますし、 ゴミとして焼却されれば、環境に負荷がかかります。

里地里山の美しさは人間の手入れのたまものです。
耕作放棄地されて林地となった農地
手入れされなくなって荒れてしまうと、さまざまな問題を引き起こします。

実践例-1 踏み込み温床

●使用する地域の資源
落ち葉、竹、わら、米ぬか

冬の間、竹とわらで枠をつくり、その中に落ち葉、米ぬかをサンドイッチ状に積んで水をかけ、足で踏み込んでいくと、発酵熱がでます。その自然の熱を活用して、冬の間に春や夏の野菜の苗を育てます。
この発酵熱を活用した苗床を踏み込み温床といいます。

使い終わったら、落ち葉やわらは積んで山にしておくと、1~2年ほどで良質な腐葉土に生まれ変わります。この腐葉土は、次の季節の種まきに使います。竹も炭にしたり、堆肥にしたりするので、ゴミが出ません。

仕込み終わった踏み込み温床
仕込み終わった踏み込み温床。アルミサッシの窓は捨てられるものを温床の蓋として再利用しています。

実践例-2 草マルチ

●使用する地域の資源

刈らなければならない面倒な存在だと認識される草を資源として捉えなおし、刈るのではなく取りに行くものと思考を転換します。
この取ってきた草をビニールの被覆材(マルチフィルム)の代わりに敷き草として使います。

刈った草を軽トラックに載せて運びます。
作物の株元や、作物間の通路部分に草を敷きます。写真は落花生(左)とスイカ(右)の間に草を敷いたところ。

敷き草には次のような効果があります。

・土のなかの生き物の餌になる(→土が豊かになる)

・日光を遮断するので下から草が生えてこない

実践例3 荒れ地再生炭焼きプロジェクト

●使用する地域資源
荒れ地(竹、篠竹、枯れ木など)

使われなくなって荒れてしまった農地や山林などの竹、篠竹、つる草、枯れ木などを使って炭焼きをし、その炭を作物栽培に活用します。

無煙炭化器の炭焼き試験開始!
無煙炭化器による炭焼き

詳しくはこちら!

荒地再生炭焼きプロジェクト
https://e-nojo.com/sumiyaki/

5つのこだわり

野菜の栽培についてはさまざまな考え方がありますが、当農場では、野菜も人間も生きているという意味では基本的には同じだという考えのもと、次の5つのことを大切にして野菜を育てています。

1.健全な土が健康な作物を育む

枯れ草などの有機物で作物周りの地表を覆うことで、乾燥を防ぎ、草を抑え、土の生きものに餌を与えて紫外線から守る。有機物被覆にはさまざまな効果がある。
枯れ草などの有機物で作物周りの地表を覆うことで、乾燥を防ぎ、草を抑え、土の生きものに餌を与えて紫外線から守る。有機物被覆にはさまざまな効果がある。

しっかり睡眠をとり、きちんと食事をとってストレスなく生きていれば病気にかかりにくくなるのと同じで、作物も健康に育てれば病気や虫にやられることはあまりありませんし、やられたとしてもさほど大きな被害にはつながらないものです。

農作物にとっての睡眠や食事の場は畑の土なので、当農場では作物が健康に成長する土を育てることを重視しています。(これが簡単ではないのですが……)

2.食べ過ぎは病気のもと

人間も作物(植物)も同じで、たくさん食べると早く大きくなります。ですが、食べ過ぎでメタボになると病気がちになるのと同じで、早く大きく育てたいがために肥料をあげすぎてしまうと、病気の原因になります。ですので、与える肥料を少なめにして、健康な作物を育てることを心がけています。

また、人間がサプリメントや栄養ドリンクだけでは元気に育たないのと同じで、化学肥料だけを与えている畑では作物は健全に生育しません。だから、畑に十分なごはん(畑の主食となる堆肥など)を与えるようにしています。

3.健康なら薬(農薬)はいらない

健康な作物は病気や虫に負けることはありません。虫や病気にやられたら(やられそうになったら)農薬を使う、という考え方ではなく、虫や病気にやられないような元気な作物を育てることを目指していますので、たとえ有機JASで認められた農薬であっても、使いません。そのため、有機JAS認証も取得していません。

有機JASの認証制度について詳しくはこちら
・有機食品の検査認証制度(農林水産省)

病気や虫で作物が大きな被害を受けたら、作物が何らかの理由でストレスを受けていたことが考えられますので、そのストレスの源を突き止めて予防する、という方法で健康な作物を育てていくのが当農場の考え方です。

4.野菜も人間も一人じゃ生きられない

枯れ草や作物の残さを食べて土に還す一役を担うヤスデ(幼生)
枯れ草や作物の残さを食べて土に還す一役を担うヤスデ(幼生)

人間がひとりでは生きられないのと同じで、本来は野菜も単独では健康に育ちません。ミミズやヤスデ、トビムシ、さまざまな微生物や植物など、畑のいろいろな生き物の活動がなければ、健康な野菜が育つ健全な土は成り立ちません。

農薬を使うとこれらのこれらの生き物を殺してしまったり、悪影響を及ぼしてしまったりします。さらに、こうした生き物が農薬の害を受けると、これらの生き物を餌として生きている生き物にも影響を及ぼします。当農園が農薬を使わないもう一つの理由は、こうした畑とともにある生き物たちを守るためなのです。

5.育てやすさ、売りやすさより「おいしさ」

「育てやすくて売りやすい」というのは農家にとってとてもありがたいことです。野菜の種を買うと、その袋には「育てやすさ」や「売りやすさ」に関係する、次のような売り文句が書かれています。

育てやすさ

早く育つ、発芽がそろいやすい、病気に対する抵抗力がある、暑さ(寒さ)に強いなど

売りやすさ

収穫量が多い、形がそろう、色がいい、大きくなりすぎないなど

値段の安い輸入作物がたくさん国内に入ってくるなか、育てやすくて売りやすいという条件は、農家にとってとてもありがたいことです。ですが、作物は食べ物ですので、それよりも大切なのはなんといってもおいしさだと思います。(安全で安心できるのは第一です)
早く育ち、病気に強くてたくさんとれる野菜でも、おいしくなければ長くは売れませんし、買ってくださった方も残念な気持ちになることでしょう。

加賀伝統野菜の打木源助大根
当農場でも栽培している「売りにくい」野菜のひとつ、打木源助大根。肉質なめらかで甘みがあり、煮物やおでんにとてもよく合うが、芯が空洞になったり、す入りしたりしやすい。

昔と比べると野菜の栄養価や味が落ちたとは、よく言われることです。その理由はいろいろあると思いますが、ひとつは味より育てやすさや売りやすさが優先されてきたことにあるのではないかと考えています。

とはいえ、繰り返すようですが、私も農家の一人として、育てやすくて売りやすいということ自体はとてもありがたいことだと考えています。ただ、それよりもおいしさをより重視したいのです。

栽培しているもの ー 在来野菜もいろいろ少しずつ

加賀伝統野菜の打木源助大根

当農場では季節に応じて在来種を含むさまざまな作物を栽培しています。

農業にはいろいろな経営の形があり、国内ではネギ農家、キャベツ農家といったように専門の作物を中心に栽培する農家が多いですが、当農場ではその季節にとれるさまざまな種類の露地野菜を少しずつ育てる少量多品目栽培をしています。

それは、無農薬栽培をする上で、場所を変えてさまざまな種類の野菜を育てる「輪作」や、複数の種類の野菜を混ぜて植える「混作」が重要な栽培技術であるためでもありますが、うちの農場と食べてくださる方の食事がつながっていて欲しい、その季節にとれる旬の作物で食卓をいろどって欲しいという想いが根底にあるのが大きな理由です。

栽培方法についての情報公開

春夏秋冬、それぞれの季節に畑をいろどる多様な味が食卓の豊かさにつながれば嬉しいです。

当農場の栽培作物

野菜、穀類(、麦、大豆)、香辛野菜を含めて年間約70品目の作物を育てています。
2022年からごくわずかですが、栗、レモン、枇杷、プラム、杏子、ポポー、ゆず、梅などの果樹や、ヘーゼルナッツ、アーモンド、ペーカンナッツなどのナッツ類の栽培を始めました。

葉もの類
小松菜非結球白菜(べか菜、山東菜)、からし菜、わさび菜、チンゲンサイ、春菊、キャベツ、サニーレタス、半結球レタス、球レタス、ほうれん草、水菜

花蕾類(つぼみを食べるもの)
ブロッコリー、のらぼう菜、紅菜苔、菜ばな、かき菜、

根菜類
大根カブ人参、ジャガイモ、ラッキョウ(エシャレット)など

豆、麦など
さやいんげん、実えんどう(グリーンピース)、そら豆、六条大麦(麦茶用大麦)など

果菜類
トマト、キュウリナス、ピーマン、シシトウ、在来青ナス、カボチャ、にがうり(ゴーヤ)、オクラ、パパイヤ

葉もの類
空芯菜(エンサイ)、ツルムラサキ、ネギ

豆類、穀類
枝豆、ゴマ

香辛野菜など
シソ、葉生姜、唐辛子、シソ、エゴマ(葉)、レモングラス、パクチー、バジル、ミントなど

秋から冬

根菜類
里芋、大根カブ山芋ごぼう人参、玉ねぎ、ニンニク、生姜、ラディッシュ、サツマイモ

葉もの類
キャベツ、白菜、ネギ小松菜、ちぢみ菜、ホウレンソウ、非結球白菜(べか菜、山東菜)、春菊、からし菜、ターサイ、チンゲンサイ、水菜、サニーレタス、半結球レタス、球レタス、ニラ、わさび菜

花蕾類
ブロッコリー、カリフラワー

香りもの
根生姜、にんにく、ルッコラ

穀類
大豆

土から生まれ土にかえる

枯れ草などの有機物で作物周りの地表を覆うことで、乾燥を防ぎ、草を抑え、土の生きものに餌を与えて紫外線から守る。有機物被覆にはさまざまな効果がある。

〜農薬と化学肥料を使わないもう一つの理由

 

畑は本来、その土地でとれる資源を上手に活かして作物を生産する資源循環の場であると同時に、さまざまな生き物が生きる場でもありました。

 
 
畑の生き物というと、作物を食害する虫がまっさきに思い浮かぶかもしれませんが、それらを食べる、いわゆる天敵もいますし、土の中で生きながら作物の生長を陰で支える土壌生物(ミミズやトビムシなど)と呼ばれる生き物もたくさんいます。
 

畑の典型的な「害虫」とされる夜盗虫(よとうむし)。こうした特定の生きものが爆発的に増えないように管理するのが有機農業の大切な仕事です。

 
こうした生き物たちは食べたり食べられたりといった食物連鎖のなかで命をつないでいますので、農薬を使って特定の生き物を一気に殺してしまうと、この連鎖が崩れてしまい、生き物のバランスを崩してしまうおそれがあります。トキが絶滅の危機に瀕した理由のひとつに、こうした農薬の使用があると指摘されています。
 
 

といっても、「どんな生き物も殺してはいけない」と言いたいわけではありません。生業として農業をやっていますので、作物を食害する虫をみつければ手で取ってつぶすこともあります。ただ、薬物をまいて生き物を殲滅するようなことはしたくないので、農薬は使わないのです。地球があまりにも人間中心に動かされてきていることへの小さな抵抗でもあります。
 
 

もうひとつは農薬と同じように広く一般的に使われている化学肥料です。現代の化学肥料は限りある石油などのエネルギーと鉱物資源なしに作ることはできないため、化学肥料頼りでは持続可能な農業は実現できません。
 
 

【ご参考】化学肥料Q&A(日本肥料アンモニア協会)

http://www.jaf.gr.jp/hiryou/question/Q3.htm

 
 

それに、化学肥料だけで作物を栽培し続け、畑に生き物の餌となる有機物(ここでは草、落ち葉、それらを材料にした堆肥など)を入れないと、土を豊かにする働きのある生き物が生きていけなくなり、土がどんどんやせていってしまうのです。やせた土では健康な作物は育たず、病気や虫にやられてしまいます。その結果、農薬の使用、という悪循環に陥っているのではないかと思います。
 
 

化学肥料がなかった時代に行われていたように、畑の近場で手に入る有機物を上手に活用すれば、畑やその周囲は生き生きと蘇るはずです。地権の問題があるので一筋縄にはいかないかもしれませんが、例えば荒れてしまった里山の下草刈りや落ち葉掃きをしたり、耕作放棄地や川原、空き地の草刈りをしたりして、そこで集めた草や落ち葉などの有機物を畑に還元する。
荒地に生い茂る篠竹も、活用方法次第では立派な資源として蘇るはずとの確信から、「荒地再生炭焼きプロジェクト」といったようなことも考えています。

▶︎▶︎荒地再生炭焼きプロジェクトについて

 
 

山の落ち葉をかき集めて作る腐葉土は有機農業に欠かせません。

 
 
里山が蘇れば野生動物による農作物の食害も減るでしょうし、美しい農村の風景も戻ってくるはずです。耕作放棄地が資源採取・循環の場として捉え直されれば、その数が減るかもしれませんし、地域内での資源循環の輪を再び作り上げることもできると思うのです。

 
 
実際に自分の農場を経営しながら、荒れた里山の再生までやるのはなかなか骨の折れることで、腐葉土(野菜の苗を育てるのに使う)の材料を集めるための落ち葉掃きくらいしかできないかもしれませんが、それでも、有機農業で生計を立てていく以上、頭のなかではこうしたことを常に考えていきたいと思っています。
 
 

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売っている場所・当農場のお客様

食品館ハーズのポップ

【販売先とお客様のご案内】
当農場の作物や商品の販売先、ならびに作物を買ってくださっているお客様(お店)をご案内します。

販売先

食品館ハーズ

食品館ハーズの井伊農場のポップ
食品館ハーズさんが作ってくれたうちの農場のポップ

埼玉県深谷市にある地スーパー。地域周辺の他のチェーンのスーパーと比べると、こだわった商品の品ぞろえがよく、有機食材の棚もあります。このスーパーの地元野菜コーナーに出荷しています。

お客様

日本料理 喜楽

https://kiraku-yorii.co.jp/
寄居町にある日本料理店。季節の食材を使い、丁寧に産み出される料理、女将さんや板前さん、仲居さんのおもてなしが心地いいお店。地場の食材をなるべく使おうとするその姿勢がとても嬉しく、ありがたい。

居酒屋か~む

https://m.facebook.com/izakaya.calm/
寄居町にある居酒屋さん。日本酒好きの夫婦が営むお店なので、おいしい日本酒が飲めます。津本式血抜き法で血抜きした刺身や魚料理が売りですが、ほかにもおいしいものがいっぱいあります。

寄居町居酒屋か~むの有機野菜ナムル
うちの季節の野菜を使ったお惣菜盛り(ナムル/写真上)をメニューに載せてもらってます。そのとき採れる野菜を使ったナムルは、すべて味付けが違うので、食べて楽しい季節の一皿です。季節によって使う野菜が変わるので、小さな畑を食べるようなメニューに仕上がっています!

有機野菜とジビエ料理のお店 おにのわ

https://www.instagram.com/onino_wa/
農業や農家、大地の恵みへの愛にあふれる店長さんが営むお店です(東京都墨田区)
(おにのわinstagramより)
大地の恵みに感謝して。寄居町や茨城の有機農家の野菜とお米、全国の信頼できる猟師と管理の行き届いた加工所を通したジビエ肉で、身体に優しい、手づくり料理をご提供します。

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