有機農業の新規就農は厳しいけれどきつくない

キャベツの育苗

種をまけば芽がでる、これが農業のともし火かもしれない

結果を出せていない有機農業の新規就農者の口から発せられる言葉は、霧のように霞みながら消失するだけで意味をなさない。それに意味を持たせられるようになるには、気の遠くなるような長い年月がかかる。それまでは、体と手だけを動かし、ひたすら田畑と向き合うのみ。

そうすれば、時間はかかってもきっといつか、田畑が代わりとなって雄弁に物語ってくれるはずだ。

有機農業という言葉が生まれたばかりでほとんど認知されていなかった時代、その扉を開いた金子美登さん(埼玉県小川町)の言葉をいつも思い出し、静かに勇気づけられる。今の状況は金子さんが乗り越えてきた苦難と比べればチリやホコリみたいなもんだ。ふっと吹きゃ飛び散る。大したことじゃない。

金子さんの直接の弟子に教わった自分は、自称「金子さんの孫弟子」だ。金子さんはもちろん、ほかの誰もそんなことを認めちゃいないことはわかっているけれど、この自称も自分の背中を静かに大きく押してくれる。

開拓の扉は先輩たちによって開かれている。この扉が閉ざされないようにするのが後進の役割だと勝手に自認している。有機農業の新規就農は厳しいけれど、ザワザワするほどきつくない。厳しさときつさは明確に違う。きつくなければ前に進める。前に進めばまた少し道が広がる。広がったらまた少し種をまけば小さな芽が出るはずだ。

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