新規就農希望者がやってくる

サニーレタスの苗

サニーレタスの苗

 

しばらく前、役場の人が、寄居町で新しく有機農業を始めようとしているという人を連れてうちの畑にやって来た。県内のある農家ですでに1年間の研修を終え、独立して就農する場所を探しているところだという。ここでは仮にAさんとする。

 

全国各地で新規就農者を求めているなかで、寄居町のように新規就農の条件が特段整っているわけではない地域に新規就農希望の人が来るのはまれなことだろう。それに、農協の直売所に顔を出すと、目の当たりにすることだが、地元で農業をやっている人たちの年齢層はかなり高い。世の中では中年のおっさんに分類される自分が、ここではたぶん一番の若手で、正確に調べたわけではないものの、その上の代がすこっと抜けていて、次がたぶん60代以上の先輩方となる。

 

そんな状況だから、あと10年もすれば耕作されなくなった田畑がどんどん出てくるに違いない。田畑は食べ物を生み出し、美しい景観を形成し、生きものを養い、環境を安定化させる素晴らしい財産だけれど、耕作されなくなって荒れてしまうと、とても残念なことに負債になってしまう。

田畑が荒れるとどうなるかについてはこちら(荒地再生炭焼きプロジェクト)
http://e-nojo.com/sumiyaki/

長い歴史の中で田畑が負のものとして捉えられるのは、おそらく初めてのことだろう。

そうならないようにするには、新しく農業を始める人を少しずつ増やしていくしかない。荒地の拡大を防ぐという死活問題をなんとかするには、Aさんのような存在は必須だと思っている。

ということで、この地で農業をしている身として、何とかしてこの宝を手に入れるべく、いろいろとセールストークのような話をしたわけだが、それが終わって帰宅してから冷静にAさんの話を思い起こして少し考え直した。

人のことを言えた義理ではないが、Aさんは1年の研修を終えた割に新規就農の厳しい現実が見えていない(かつての自分のようだ…)。特に必要な資金の面を現実的に考えられていない気がしたので、このまま農業を始めても数年で事業として回らなくなる可能性が高い。

しばらく前、寄居町で長く農業に携わってきた若者が去っていった。あの時のことを思い出す。もう、去っていく人を見たくない。

Aさんの連絡先はわからないので、役場の人に「もしAさんと連絡を取ることがあったら伝えてください」と、言付けメールを送ることにした。Aさんの心に響くかどうかわからないけれど、後悔のないよう自分がやれることはやっておこうと思い、自分の経験を重ねて一通のメールをしたためた。

「(うちの)ホームページ経由で連絡します」
といったようなことを言っていたので、連絡が来たら自分で伝えようと思っていたが、幸か不幸か連絡はない。新規就農候補者を失ったかもしれないのは残念でならないけれど、資金面のことをしっかり考え直してくれていることを願うばかりだ。

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